Kototoe

たしか
たしかなものは、そんなに多くは存在しない。
たしかなものは、それほど手元に残らない。
けれど、ひとつ。
たったひとつだけでもと願うなら、
あなたのための"たしかなもの"を、ここに。
この絵が在る限り、希望は在るのだろう。
この絵の向こうに私がいること。
この絵を見つけたあなたといること。
それだけが、私たちの今に必要なすべてであること。

だから、私は生きている。
どうせ別れるのに、なぜ出会うのだろう。
別れの痛みは増すというのに、なぜ愛すのだろう。
永遠が、不滅があれば救われただろうか。
けれど、 永遠があるなら、誰がこの今という瞬間を慈しむだろう。
不滅があるなら、誰がこの瞬間自分の周囲にあるものを愛したいと思うだろう。
生きていくだけで、一体どれほど傷付くのだろう?
一体どれほど出会っては別れるのだろう?
その苦しみを分かりたい。
その痛みを代わってあげたい。
けれど、それは私にはできない。
あなたの過去はあなたが愛し、
あなたの傷は、あなたが見つけた愛によって癒えていく。
ただそれを願いながら、その日が来るのを待ちながら、
あなたと出会ったこの人生を愛おしむ。
あなたを愛せば愛すほど、あなたとの別れはつらいだろう。
だからこそ、あなたを愛そう。
この手の中にあるものを愛と呼び、
一瞬を重ねて、この私が朽ちるまでを生きよう。
あなたの海をゆく。

波はあなたを、あなたの望む方へは運ばない。
あなたはひとり、波のはざまでその手に舵を握っている。
人生は、海だ。
わたしたちは、たゆたいながら進んでゆく。
わたしたちもまた、海だ。
いつか流したあなたの涙が
いつかどこかで誰かの背をなでる。
いつかあなたが言えなかったひと言を
いつかどこかで誰かがつむぐ。
わたしたちは、海だ。
広く澄み渡り、そしてつながっている。
ひとりであって、ひとりではない。
人生とは、海だ。
そして、つねにうつくしい。